建物などの価値が減った分を反映する「減価修正」
同じような建物を今つくるとしたら3,000万円かかるとしても、築20年の建物にそのまま3,000万円の価値があるとは考えにくいでしょう。
建物は時間が経つにつれて傷んでいきます。また、まだ十分に使える状態でも、設備が古くなったり、間取りが現在の生活スタイルに合わなくなったりすることで、価値が低下することもあります。
そこで原価法では、まず「今、同じような不動産をつくるならいくらかかるか」という再調達原価を求め、そこから価値が減少した分を差し引きます。この作業が「減価修正」です。
ここで大切なのは、「築○年だから一律に○%下げる」という単純なものではないことです。
建物の傷み具合や維持管理の状態、設備や間取りの使いやすさなど、実際にどのような理由で、どの程度価値が減っているのかを考える必要があります。
つまり減価修正とは、新しくつくる場合の費用を出発点として、現在までに生じた価値の減少を反映し、その不動産の今の価値に近づけていく作業です。
ここからは、不動産鑑定評価基準に沿って、どのような理由で価値が減少するのか、そしてその減価額をどのように求めるのかを見ていきましょう。
減価修正の定義
「減価修正」とは、古くなったことなどによって生じた価値の減少分を、再調達原価から差し引くことです。
簡単にいえば、「今、新しくつくった場合の価格」から価値が下がった分を差し引いて、価格時点における適正な「積算価格」を求めるということです。
減価修正の目的は、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることである。
減価修正を行うに当たっては、減価の要因に着目して対象不動産を部分的かつ
総合的に分析検討し、減価額を求めなければならない。
減価の要因
「減価の要因」は、**建物などの劣化による「物理的要因」、使い勝手や設備などによる「機能的要因」、周辺環境や市場の変化などによる「経済的要因」**の3つに分けられます。
ただし、この3つは別々に作用するとは限らず、お互いに関連し、影響し合いながら不動産の価値を低下させることに注意が必要です。
減価の要因は、物理的要因、機能的要因及び経済的要因に分けられる。
これらの要因は、それぞれ独立しているものではなく、相互に関連し、影響を与え合いながら作用していることに留意しなければならない。
①物理的要因
建物は、普通に使っているだけでも少しずつ傷み、使っていなくても時間の経過や雨・風などによって老朽化していきます。
こうした**「不動産そのものが物理的に傷んだことで価値が下がること」**が物理的要因で、災害などによる予期しない損傷も含まれます。
物理的要因としては、不動産を使用することによって生ずる摩滅及び破損、時の経過又は自然的作用によって生ずる老朽化並びに偶発的な損傷があげられる。
②機能的要因
建物は、壊れたり古くなったりしていなくても、時代の変化によって「使いにくい建物」になれば価値が下がることがあります。
物理的要因が「建物そのものの傷み」だとすれば、**機能的要因は「建物の使い勝手や性能が時代に合わなくなること」**と考えるとわかりやすいです。
機能的要因としては、不動産の機能的陳腐化、すなわち、建物と敷地との不適応、設計の不良、型式の旧式化、設備の不足及びその能率の低下等があげられる。
③経済的要因
「経済的要因」は、建物自体に問題がなくても、周りの街や不動産市場が変化することで、その不動産の価値が下がるという考え方です。
物理的要因が「建物そのものの傷み」、機能的要因が「使い勝手や性能の古さ」なら、**経済的要因は「不動産を取り巻く外部環境の変化」**と捉えるとわかりやすいです。
経済的要因としては、不動産の経済的不適応、すなわち、近隣地域の衰退、不動産とその付近の環境との不適合、不動産と代替、競争等の関係にある不動産又は付近の不動産との比較における市場性の減退等があげられる。
減価修正の方法
減価額は、一つの見方だけで決めるのではなく、異なる角度から求めた結果を照らし合わせて判断することが大切です。
このあと出てくる二つの方法は、どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの弱点を補いながら併用するのがポイントです。
減価額を求めるには、次の二つの方法があり、これらを併用するものとする。
①耐用年数に基づく方法
耐用年数に基づく方法は、対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として減価額を把握する方法である。
経済的残存耐用年数とは、価格時点において、対象不動産の用途や利用状況に即し、物理的要因及び機能的要因に照らした劣化の程度並びに経済的要因に照らした市場競争力の程度に応じてその効用が十分に持続すると考えられる期間をいい、この方法の適用に当たり特に重視されるべきものである。
耐用年数に基づく方法には、定額法、定率法等があるが、これらのうちいずれの方法を用いるかは、対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべきである。
なお、対象不動産が二以上の分別可能な組成部分により構成されていて、それぞれの経過年数又は経済的残存耐用年数が異なる場合に、これらをいかに判断して用いるか、また、耐用年数満了時における残材価額をいかにみるかについても、対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべきである。
ここで大切なのは、単に「築何年だから、あと何年」と機械的に考えるのではなく、その不動産がこれから実際にどれくらい価値を保って使えるかを見ることです。
そのため「経済的残存耐用年数」は、建物の傷み具合だけでなく、**使い勝手や市場での競争力まで含めて判断する「価値の残り時間」**と考えるとわかりやすいです。
②観察減価法
観察減価法は、対象不動産について、設計、設備等の機能性、維持管理の状態、補修の状況、付近の環境との適合の状態等各減価の要因の実態を調査することにより、減価額を直接求める方法である。
観察減価法の適用においては、対象不動産に係る個別分析の結果を踏まえた代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度等を適切に反映すべきである。
「観察減価法」は、築年数から機械的に減価を考えるのではなく、「この不動産は、今実際にどれだけ価値を失っているのか」を現物を見て判断する方法です。
さらに、その不動産だけを見るのではなく、競合する不動産と比べてどれくらい魅力や競争力が残っているかまで含めて減価額を判断するのがポイントです。