基本的事項=どの不動産を評価するのかをハッキリさせる
不動産の価値を調べるとき、最初に必要なのは「いくらなのか」を考えることではありません。
その前に、**「そもそも、どの土地や建物を評価するのか」**をハッキリさせる必要があります。
たとえば実家の価値を知りたい場合でも、「土地だけ」を評価するのか、「土地と建物を一緒に」評価するのかによって、評価する対象は変わります。また、土地の一部だけが対象になったり、借地権などの権利が関係したりすることもあります。
不動産鑑定では、このような**「今回、価値を判定するのは何なのか」**を明確にした不動産を「対象不動産」といいます。
対象不動産をきちんと確定することは、鑑定評価の大切な出発点です。
ここからは、不動産鑑定評価基準に沿って、対象不動産をどのように確定していくのかを見ていきましょう。
対象不動産の確定
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず、鑑定評価の対象となる土地又は建物等を物的に確定することのみならず、鑑定評価の対象となる所有権及び所有権以外の権利を確定する必要がある。
対象不動産の確定は、鑑定評価の対象を明確に他の不動産と区別し、特定することであり、それは不動産鑑定士が鑑定評価の依頼目的及び条件に照応する対象不動産と当該不動産の現実の利用状況とを照合して確認するという実践行為を経て最終的に確定されるべきものである。
「対象不動産の確定」とは、どの土地・建物を評価するのかだけでなく、どの権利を評価するのかまで明確にすることです。
たとえば、同じ土地でも「土地そのものの所有権」を評価するのか、「借地権」を評価するのかで対象は変わります。現地の実際の利用状況も確認して、『今回、何を評価するのか』をはっきり特定するんですね。
基本的事項「対象確定条件」
「対象確定条件」とは、今回の鑑定で『どの不動産の、どの権利を評価するのか』をはっきりさせるための条件です。
たとえば、土地のどこまでを対象にするのか、所有権を評価するのか賃借権を評価するのかなど、依頼の目的に合わせて鑑定評価の対象を具体的に決めるんですね。
対象不動産の確定に当たって必要となる鑑定評価の条件を対象確定条件という。
対象確定条件は、鑑定評価の対象とする不動産の所在、範囲等の物的事項及び所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件であり、依頼目的に応じて次のような条件がある。
- 物的事項…不動産の所在、範囲等
- 権利の態様に関する事項…所有権、賃借権等
では、具体的な5つの対象確定条件を見ていきましょう。
①現況を所与とした鑑定評価
不動産が土地のみの場合又は土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として鑑定評価の対象とすること。
これは、土地や建物を「今ある実際の状態のまま」評価するという条件です。
たとえば土地に建物が建っているなら、建物を取り壊した状態などを想定せず、現在の土地と建物の状態をそのまま前提にして評価するんですね。
②独立鑑定評価
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とすること。
これは、土地と建物が一体となっている不動産から、土地だけを取り出して「建物がない更地」として評価するという条件です。
つまり、実際には建物が建っていても、「もしこの土地に建物がなかったら、土地はいくらか?」と想定して評価するんですね。
③部分鑑定評価
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として、その不動産の構成部分を鑑定評価の対象とすること。
これは、土地と建物を現在の状態のままにして、その一部分だけを取り出して評価するという条件です。
たとえば、土地と建物が一体となった不動産について、建物だけ、あるいは土地だけの価値を求めるような場合ですね。
④併合鑑定評価・分割鑑定評価
不動産の併合又は分割を前提として、併合後又は分割後の不動産を単独のものとして鑑定評価の対象とすること。
これは、複数の土地を一つにまとめたり、一つの土地をいくつかに分けたりした後の状態を想定して評価するという条件です。
つまり、現在の状態ではなく、「併合・分割した後、この不動産はいくらになるか?」を評価するんですね。
⑤未竣工建物等鑑定評価
造成に関する工事が完了していない土地又は建築に係る工事(建物を新築するもののほか、増改築等を含む)が完了していない建物について、当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすること。
これは、まだ完成していない造成地や建物を、「工事が完成した状態」として評価するという条件です。
つまり、現在は工事の途中でも、「予定どおり完成したら、この不動産はいくらになるか?」を想定して評価するんですね。
その他の鑑定評価
なお、上記に掲げるもののほか、対象不動産の権利の態様に関するものとして、価格時点と異なる権利関係を前提として鑑定評価の対象とすることがある。
これは、実際の権利関係とは違う状態を想定して、その不動産を評価することもあるという意味です。
たとえば価格時点では賃借権が設定されていても、「その権利がないものとしたら、いくらになるか?」というように、異なる権利関係を前提に評価する場合があるんですね。
対象確定条件の設定にあたって留意すること
「対象確定条件」は自由に決められるものではなく、対象不動産をきちんと調査したうえで、依頼の目的に合った条件かを確認する必要があります。
さらに、その条件を設定することで、鑑定評価書を利用する人が不利益を受けるおそれがないかまで考えて判断するんですね。
対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。
また、未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、以下の条件にも留意する必要があります。
なお、未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、上記妥当性の検討に加え、価格時点において想定される竣工後の不動産に係る物的確認を行うために必要な設計図書等及び権利の態様の確認を行うための請負契約書等を収集しなければならず、さらに、当該未竣工建物等に係る法令上必要な許認可等が取得され、発注者の資金調達能力等の観点から工事完了の実現性が高いと判断されなければならない。
未竣工の建物を「完成したもの」として評価するには、設計図や契約書などで、完成後の建物の状態や権利関係をきちんと確認できることが必要です。
さらに、必要な許認可が取得され、資金面などから見ても、「実際に工事が完成する可能性が高い」と判断できなければならないんですね。