取引事例比較法では、実際の取引価格をどう比べる?
取引事例比較法では、実際に売買された不動産の価格を参考にします。
しかし、参考にする土地が3,000万円で売れたからといって、評価する土地も3,000万円になるわけではありません。不動産は一つひとつ条件が違うからです。
そこで、まず対象不動産と比較できる取引事例を集め、その中から適切なものを選びます。そして、売主や買主の特別な事情が価格に影響していれば「事情補正」を行い、取引された時期が違えば「時点修正」を行います。
さらに、地域の利便性などの違いや、土地の形・道路との接し方といった個々の条件の違いも比較していきます。
つまり取引事例比較法では、「実際に売れた価格」をそのまま使うのではなく、対象不動産と同じ条件だったらいくらになるのかを考えながら価格を調整していくのです。
こうして複数の取引事例から求めた価格を比較・検討し、対象不動産の価格を判断していきます。
ここからは、取引事例比較法がどのような手順で適用されるのかを、一つずつ見ていきましょう。
①事例の収集及び選択
取引事例比較法は、市場において発生した取引事例を価格判定の基礎とするものであるので、多数の取引事例を収集することが必要である。
取引事例は、原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとし、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから、対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には、同一需給圏内の代替競争不動産に係るもののうちから選択するものとするほか、次の要件の全部を備えなければならない。
① 取引事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること。
② 時点修正をすることが可能なものであること。
③ 地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。
これは番号の振り順が違っていますが、内容は事例選択四要件と全く同じです。
どれも事例選択の基本となる要件ですので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
②事情補正及び時点修正
取引事例が特殊な事情を含み、これが当該事例に係る取引価格に影響していると認められるときは、適切な補正を行い、取引事例に係る取引の時点が価格時点と異なることにより、その間に価格水準の変動があると認められるときは、当該事例の価格を価格時点の価格に修正しなければならない。
時点修正に当たっては、事例に係る不動産の存する用途的地域又は当該地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地又は建物の価格の変動率を求め、これにより取引価格を修正すべきである。
基本的には原価法で説明したものと同じですが、こちらは取引事例比較法用にアレンジしたような内容になっています。
基準原本を具体的に説明すると、事情補正と時点修正は、どちらも取引価格をそのまま使わないための調整ですが、直すものが違います。
事情補正は「その取引だけにあった特殊な事情」を取り除く調整、時点修正は「取引した時期の違いによる価格変動」をそろえる調整と考えると、違いがわかりやすくなります。
③地域要因の比較及び個別的要因の比較
取引価格は、取引事例に係る不動産の存する用途的地域の地域要因及び当該不動産の個別的要因を反映しているものであるから、取引事例に係る不動産が同一需給圏内の類似地域等に存するもの又は同一需給圏内の代替競争不動産である場合においては、近隣地域と当該事例に係る不動産の存する地域との地域要因の比較及び対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較を、取引事例に係る不動産が近隣地域に存するものである場合においては、対象不動産と当該事例に係る不動産との個別的要因の比較をそれぞれ行うものとする。
また、このほか地域要因及び個別的要因の比較については、それぞれの地域における個別的要因が標準的な土地を設定して行う方法がある。
取引事例の価格には、「その地域だからこの価格」「その土地だからこの価格」という2種類の違いが入り込んでいます。
そのため、別の地域の事例なら地域要因と個別的要因の両方を、同じ近隣地域の事例なら個別的要因を比べます。比較の基準として、各地域に「標準的な土地」を設定して比べる方法もあります。
これ以外も、配分法という方法があります。こちらは実際に不動産の価格・賃料を求める際にもよく使うものなので、別記事で解説していきます。